連載#5(最終回)確認できる事実が信頼の基盤になる
連載の最終回となる第5回では、これまで整理してきた「外部から確認できる事実」を取引先との共通の土台にすることで、サプライチェーンの関係がどのように変わるのかをまとめます。あわせて、実務で最初に取り組める3つのステップを紹介します。
1. 「チェック」から「共同改善」へ
外部から確認できる事実を使う目的は、監視を強めることではありません。取引先との関係を変えることにあります。
これまでのサプライチェーンの管理は、申告内容を疑い、不備を探し、問題があれば指摘する「チェック型」になりがちでした。この構造では、発注側と受注側が対立しやすくなります。
共通の事実を土台にすれば、「この点が弱いようです」「一緒に改善しませんか」という対話に変えることができます。
| これまで | これから |
|---|---|
| チェック | 共同改善 |
| 疑う | 共有する |
| 対立 | 協働 |
2. セキュリティが取引を支える要素になる
セキュリティは、コストがかかり、手間が増え、スピードが落ちるものと受け止められがちでした。
一方で、取引先から対策状況の説明を求められる場面は増えています。「安全です」と述べるだけでなく、根拠を示せる状態にしておくことは、審査や交渉を円滑に進めることにつながると期待できます。
3. 実務担当者が本来の仕事に時間を使える
アンケートの回収、未回答の督促、内容の確認など、多くの時間が確認作業に使われています。事実の収集はテクノロジーに任せ、判断、対話、改善は人が担うという役割分担にすることで、担当者は本来取り組むべき仕事に時間を使えるようになります。
| 作業 | 担い手 |
|---|---|
| 事実の収集・記録 | テクノロジー |
| 判断・対話・改善 | 人 |
4. SCS評価制度とのつながり
SCS評価制度では、サプライチェーンを構成する企業の対策状況を★3・★4などの段階で評価します。自己申告だけでなく、根拠を伴って状況を説明できることは、制度への備えとしても意味を持ちます。
5. 何から始めるか
すべてを一度に変える必要はありません。まずは次の3つから始められます。
- アンケートだけに依存しない:外部から確認できる情報を一つでも判断材料に加えます。
- 説明より事実を重視する:判断の根拠を、回答の言葉からデータへ移していきます。
- 改善の対話を増やす:指摘ではなく、「一緒に直す」ことを前提にします。
連載を終えて
全5回の連載をお読みいただき、ありがとうございました。
「信じる」から「確認できる」へ。そして、取引先とともに高め合う関係へ。事実をもとにしたサプライチェーンの管理を、一歩ずつ進めていきましょう。
連載一覧
- 第1回 セキュリティチェックシートが形骸化する理由
- 第2回 SCS評価制度と取引先の継続的な把握
- 第3回 自己申告に頼らない、外部から確認できる事実
- 第4回 監査やインシデント時に説明責任を果たす条件
- 第5回(最終回) 確認できる事実が信頼の基盤になる
PIPELINEの支援
PIPELINEは、外部から観測できる情報をもとに、自社や取引先のサイバーリスクを継続的に把握するための支援を行っています。RiskSensorでは、外部公開資産や設定不備などの状況を可視化し、優先して確認すべき点の整理に役立てることができます。
なお、外部から確認できる情報だけですべての構成や侵害状況を判断できるわけではありません。社内の資産管理情報や担当者による確認と組み合わせることが重要です。
ご相談について
外部リスクの確認についてのご相談は、お問い合わせからご連絡ください。SCS評価制度★3の進め方を解説したオンデマンドセミナーはこちらでご案内しています。
出典
- 経済産業省「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)」 https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/scs.html
- 情報処理推進機構(IPA)「SCS評価制度」 https://www.ipa.go.jp/security/scs/index.html